Lumix H-FT012 + DMC-GH2

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 またやってしまいました(前回の”やってもた”).こんどは買う時点で絶対しょうもないモノだとわかっていて,しかも高すぎるとわかっていて,やはり買ってしまいました.マイクロフォーサーズ用の3Dレンズ,Panasonic の Lumix H-FT012 です(このレンズ自体が高くはないのですが,使えるボディーが”御立派機”に限定).
 基線長10mm(後述)に惹かれて,です.

 この機材自体は,レンズと呼ぶのもおこがましいような,ちゃっちい光学系(けっこう精巧な3群4枚)が二つ入ったシロモノです."LOREO 3D Macro Lens in a Cap"(再発売でやっと購入)みたいなものです.ですから,価格も同規格の交換レンズ中で最低価格に位置づけられる逸品です.
 で,筆者にとって問題はボディーです.もちろんマイクロフォーサーズ(以下"m4/3"と略)なるものは何一つ持っていません.ボディーの方は,とにかく写ればいいので何か中古で買おうと考えておりました.ところが,問題の3Dレンズは”Lumix DMC-GH2 のみで可動”なようです.いろいろ閲覧,傍聴,推測,憶測,想像してみましたが,けっきょくボディまで新品で買うことにしました.こっちがデカイ.痛い.H-FT012 と DMC-GH2,二点お買い上げの合計,大台のりました(2010年11月).あほですねぇ.

 しかも,宣伝の仕方や売り場の状況を見ると,やはりというか,いつものようにというか,作る側,売る側がこの機材の特性をぜんぜん理解していません.何ができるのか,分かってないのです.あほですねぇ.

 まぁ,m4/3のボディはアダプターを介してオリンパスのOMシリーズのレンズ等が使えるので,それなりに役立ちそうなのですが.それだけなら型落ち機か中古で十分です.こんな一眼レフもどきのチャラチャラしたカメラを買わされる事が … 悔しいっす.


唯一の交換レンズH-FT012を装着したDMC-GH2
3個100円のコップを利用したマウント

 使っていて気付いたのですが,コイツはなぜこんな形なのか? 単に一眼レフに擬態しているのではないかという気がします.
 ペンタプリズムっぽい感じでストロボを装備,それは良いとして,なぜビューファインダが一眼レフと相同な位置にあるのか? ファインダの位置に関して,一眼レフに自由はありません.しかしミラーレスはその点では解き放たれているはずです.あそこである必然性はないはずです.
 機能から考えると,特に背面モニタとの関係を考えると良くない位置です.鼻の頭をモニタに押し当ててフォーカスすることになるからです,機能上,避けるべき位置関係だといえます.
 本来なら,ファインダはレンズの軸上がベストで,望遠鏡みたいな感じでファインダを覗くのが自然です.背面モニタはそれを避けた位置で,角度を変えて使いやすい位置,ということになるはずです.これらの配置は人間工学っぽい好例題ではないかとさえ思います.ミラーレスで一眼の形が変わった!と後世に評されるような.
 なのに安易にこの形,やはりただ一眼レフっぽい形にしてるだけです.そういう客層が照準なのです.ラムネが入っているだけの食玩のカメラみたいなモノ,所有している事が恥ずかしいモノの一種です.私はこんなまがい物に騙されているヒトです,みたいな … 情けないっす.

 そもそも,コレを買うまで,筆者は”ミラーレス一眼”なるものを理解していませんでした.買ってからそういうシステムがあるのか?と気付いたわけです.レンズ交換式だけど,ファインダに見せる像は光学的に横取りしたものではなく電子的に再生したもの.一眼だけど一眼レフではない,そんなのがあるのか,と,実際に覗いてから気付いたのでした.
 数年前(数えてみると6年前)にミノルタの DiMAGE A2 のファインダを覗いて微妙な遅れで酔いそうになった感じ,そのまんまレンズを付け替えられそうな造作,そういったものが,今のこういう形に繋がっているのだなと分かりました.
 なので,分かる範囲で使用感や活用方法などを書きます.ただし,マトモなレンズを一本も持ってない,今後も揃える気がないユーザの書くことですから,その点ご了承ください.

 … と書いたあと,OMアダプタ(のサードパーティ製の)とペンタKアダプタ(サードパーティー製しかない)を買いました.Roreo の 3D Lens in a Cap 9005 もコレ用で買いました.結構便利です.純正のレンズは買いそうにないです.普通の撮影はOMので問題なし.ずっと絞込み測光です.たぶんオートフォーカスも一生しません.

 … と書きつつ,だんだん DMC GH2 の不幸が分かってきました.筆者は DMC GH2 本来持っている数々の特性を全く活かしていないユーザだろうと思います.なんでウチなんかに来てしもたんや,と,DMC GH2 が気の毒に思います.買った奴がアホ,買われた機材は不運です.しかし,悪いのは売ったヤツだと思っています.怒>パナソ<怨


ステレオベース10ミリ

 このH-FT012,フォーカスリングも絞り環もありません.可動部無しです."Loreo 3D Lens in a Cap"でも距離レバーと絞りが付いていましたが,それよりシンプルです.これぞキャップだと思うんですが.カタログ上はレンズ扱いです.

 まず,このレンズというかレンズユニット,焦点距離f=12.5mmの(ズーム機構がないという意味での)単焦点レンズというか光学系が2つ並んで収まっています,各3群4枚から成っているそうです.絞りは12で固定,(繰り出し機構がないという意味での)焦点固定です.で,問題は2つの光学系の間隔,つまりステレオベース(基線長)で,これが10mmなのです.

 人間は両目の間隔が6〜7センチ程度で,この間隔の50倍くらいの距離が立体認識しやすいといわれています.つまり3メートルくらい離れたものということになります.実際には手元のお皿の魚の骨を取ったりする(けっこう立体認識に頼って)わけで,これが30センチだとすると両目間隔の5倍程度ですね(下表参照).人間という動物は,頭蓋骨の形や脳みその機能を含めて,そういう風にできているわけです.
 DMC-GH2のステレオベースの10ミリは,その1/6ほどです.50倍〜5倍の距離というと,50cm〜5cmということになります.これが本来,このレンズに向いた立体撮影距離のはずです.

基線長適正距離近接状態
1505
人体6cm3m(300cm)30cm
H-FT01210mm(1cm)50cm5cm

 一方,光学系は(レンズ付きフィルムなどによくある)パンフォーカスの焦点固定で∞〜60cmにピントが当たるようになっています.絞りはなく12で固定.取扱説明書には1m〜60cmの範囲を避けるよう記述してあります.これは3Dテレビに表示した場合(輻輳角の調整がおこなわれないため)飛び出しすぎるためのようです.要するに∞〜1mの範囲で撮れという指示です.
 結果的に,立体感を得られる範囲はせいぜい1〜3m程度で,もちろん立体感は薄めです.

 すなわちこの双眼レンズは,基線長に基づくと50cm〜5cmのはずなのに,1m以遠を狙って固定されているわけです.非常にチグハグな設定であり,何を作ろうとしたか意図不明の機材なのです.

 ですから,正しく(?)使うには,1)ステレオベースを広げるか,2)被写界を手前にずらすか,の,どちらかの対処をすべきです.しなければなりません.したほうがベターではなく,マストです.しないとバッドなのです.

 筆者は虫好きなので,もちろん2を志向します.というより,もともとそれ前提で基線長10ミリに惹かれたのです.

 2のために,普通のレンズでいうと[もっと繰り出したい]わけで,繰り出し機構のないコレの場合,エクステンション・チューブ(接写リング)を挟めば良いだけです.
 ところが…正式にはm4/3にはまだ[エクステンション・チューブ]がありません! マイクロでないフォーサーズ用のは存在しますが,マイクロのは出てない(実はヨソから出てましたが,長すぎて利用できず意外な別の方法で同等の効果)のです! 接写に強そうなオリンパスのカタログを見ても出てません.そうか,OMシリーズのレンズを使うときはチューブとかベローズもOMのを使い,OMアダプタを介してm4/3のボディにつなぐのか…

 というわけで,第二の方法,クローズアップレンズを付けることにしました.マウントがないのでプラスチックのコップをぶった切って装着,工作自体はわりと簡単です.
 コップは三色入って105円のプラスチックのやつです.適合するのを選ぶのに苦労しました.カメラを首にぶら下げてご入店,[何か筒状のモノ…]現物でサイズを確認しつつお買い回りした成果です.コップの底から22mmの所で切ると少し余裕で嵌ります.念のためにガムテープで固定.見栄えが悪いので下の写真では貼ってません.
 コップの底面を丸く切り抜いてクローズアップレンズを付けるわけです.当初はOMシリーズ以来,長いつきあいの49mm径の,ケンコーのNo.3というのを直に(コップに)付けていました.が,しばらく使ってみてグレードアップ.コップには49→55mmのステップアップリングを固定しておき,新たに購入した(しかもアクロマートの)55mmのNo.3をほぼ常設としました.No.3は焦点距離33mmなので,取説の値をもとに換算すると,たぶん21〜33cmの範囲でピントが当たる理屈です(下表).実際に撮ってもそんな感じです.


H-FT012にクローズアップレンズをかぶせる

距離(逆数)遠限界推奨限界近限界深度厚
ノーマル∞(0.0000)100cm(0.0100)60cm(0.0167)
No.2: f=50cm50cm(0.0200)33cm(0.0300)27.2cm(0.0367)22.8cm
No.3: f=33cm33cm(0.0300)25cm(0.0400)21.4cm(0.0467)8.6cm
No.10: f=10cm10cm(0.1000)9.09cm(0.1100)8.57cm(0.1167)1.43cm
No.3+No.316.7cm(0.0600)14.3cm(0.0700)13.0cm(0.0767)3.7cm


セイタカアワダチソウとヤマトシジミ
(DMC-GH2で撮ったMPOをSPMで調整,プルプル3D化)

 全体にゆ〜るいピントで撮れますが,縮小(画素数↓)するとパンフォーカスのように見えます.遠い背景は避けた方が良いかも.
 実際に野外で使ってみると,通常No.3を付けておき(キャップもしやすい),場合によってNo.3をもう一枚付けたり,必要に応じてクローズアップレンズをはずしたりするのが良いようです.キャップの固定が弱い場合,持ち方に要注意です.


DMC-GH2の"3D対応"

 少なくとも発売時点においてH-FT012が装着できるボディーはDMC-GH2のみでした.このDMC-GH2の[3D対応]の実態を書いておきます.
 すでに(ちゃんとしたステレオベースをもち,きちんと自機で3D再生できる)W1の発表から2年,発売からも1年以上たち,さらに(レンティキュラ装着の簡易な構造だが十分機能的なモニタ装備の)W3も発売されています.この時期にコレか? な Panasonic の DMC-GH2 の"3D対応"です.

 DMC-GH2 に H-FT012 をつけて,ファインダをのぞく.[なんぢゃこりゃ?!]一眼レフの感覚を期待している人は驚くはずです.背面モニタはともかく,ビューファインダにさえ片側レンズだけの画像が見えています.
 やはり[ミラーレス]は作り物なのだ,と思い知らされます.このシステム自体への信頼感や期待感が揺らぐ瞬間です.
 冷静を取り戻して手で覆ってみると,見えている像は切り取って表示されている左画像であることが理解できるでしょう.

 端的にいえば,そんなことをするのが DMC-GH2 です.勝手に.

 まずDMC-GH2がどう機能するかですが,パンフなどには具体的な事が全く書かれていません.業界共通規格のMPOで記録することも明記されてないようです.実際には購入して初めて知ることばかりです.
 H-FT012を装着するとDMC-GH2はそれを認識(a)し,特別扱いします.たとえば[未知のレンズ]扱いした上で必要事項をマニュアルで指定して撮影する,などといったことはできません.特別扱いしかしません.
 H-FT012を装着するとDMC-GH2のファインダには左画像だけが表示されます(b).サイド・バイ・サイドでの表示などはできません.このあたり,ぜんぜん一眼レフ的ではありません,驚きです.
 DMC-GH2には*.MPOファイルをSDに書き込むことができ(c),H-FT012を装着して撮影すると,左画像を*.jpg,ステレオペアを*.mpo として記録します.画素数は選べますが限定的です([1920×1440],[1920×1280],[1920×1080],[1792×1792]).
 売り場でのデモでは,3Dテレビにケーブル接続して表示する際,mpoはきちんと3Dとして扱われ(d),表示されます.

 左右像のソフト的な相対位置調整(SPMでの[簡単位置調整],W1の[−〇〇+]みたいな)は,少なくともカメラからは行えないようです.

 上記の a〜d のうち,d はおそらくテレビ側の機能だと思います.で,DMC-GH2の"3D対応"とは a〜c であって,3Dテレビで見る事だけを想定した最低限の機能が搭載されているわけです.あきらかな低機能です.撮った写真をその場で確認できないデジカメていったい.W1,W3に接した事がある人なら,必要な機能がゴッソリ欠落していると感じるはずです.
 DMC-GH2 が撮影した*.mpoファイルは DMC-GH2 自機では再生もできません.それどころか,ファイルの存在さえ表示されません.モニタがモノラル表示ならせめて片側だけでも,プルプル3Dででも,仮のアイコンだけでも見せたら良いのに.
 3D対応ということでDMC-GH2にわざわざ搭載されたと考えられるのはcの機能です.これができない未対応の機種では3Dテレビでの表示は困難でしょう.しかし[対応/未対応]の差は基本的にはこれだけのようです.未対応機においても”それなりの撮影”ができそうです.もちろん,撮れなくするメカニズムがわざわざ搭載されていれば話は別ですが.
 さいわい筆者の場合はPCにステレオフォトメーカ(SPM)が居てくれて,MPOも開けますが,他のユーザはどうするのか疑問です.H-FT012を使うためにはDMC-GH2が必要で,撮影結果を見るためにはビエラを買わされるのでしょうか.売ってるほうもビエラで見るためのカメラだと教えられているのかもしれません.ひょっとして作った人たちもその積もりなのか?

 特に H-FT012 の特別扱いを解除できないのは不誠実です.有無を言わせず左側画像だけを見せるとは何様のつもりか!と思います.そもそもどんな根拠で右画像ではなく左画像なのか?
 本来はサイド・バイ・サイドがデフォルトで,右画像のみ拡大,左画像のみ拡大,平行法配置に変換して背面表示,などを選択肢を残すべきです.左のみ拡大がデフォルトであっても[ふつうに表示]をなぜ拒むのか!
 DMC-GH2 は,撮像素子上に結ぶはずの,否,既に結んでいるサイド・バイ・サイドの像をお見せ下さいません.たのむから見せてください.お願いします.できればそのまま*.jpgで保存させてください.

お願げぇでございますだぁ

 端的にいえば,そんなことさえ許してくれないのが DMC-GH2 です.したり顔で,独善的で,聞く耳を持たない鼻持ちならないヤツです.

 信頼できない機械です.ヤツもユーザを信用していません.謙ってご機嫌を伺いながら使わせて頂くべきか,裏切るモノと心得た上で使えるところを使うべきか,どちらかしかないのです.

接点切ったろかぁ!

 レンズ/ボディの接点にテープでも貼ってみることを思いつきました(のちに実行).もし[3D未対応]のボディが,3Dだと知らずに済ませてくれ,そのまま素直に処理してくれるのなら,そっちの方がずっと良いです.

 H-FT012 を装着すると DMC-GH2 は独自の世界に入ってしまいます.いわばヤバイ組み合わせであり,DMC-GH2 には H-FT012 だと気付かれないように装着すべきである.という事です.
要するに;

H-FT012 は 3D 対応機より 3D 未対応機に向いている.
のです.
 3Dビエラにつないで見ることは DMC-GH2 以外では不可能でしょう.その意味でいうなら H-FT012 は DMC-GH2 のみ適合なのではなくDMC-GH2 + 3Dビエラのみ適合です.両方無いと無意味な適合なのです.メーカ自身の表現では[3D対応機種:GH2( 2010年9月21日現在。) ],[撮影した3D写真を見るには3D対応テレビが必要です。]となっています.

 なお,3D撮影時というかH-FT012を装着時には以下の機能が使えません.すなわち,[撮影機能]のうちフォーカス操作,絞り設定,ズーム操作,動画撮影など,[撮影メニュー]のうち記録画素数の設定,[カスタムメニュー]のフォーカス関連項目多数.まぁ,これらの大部分はメカニズムを考えれば納得できることです.このボディにこのレンズ,いかにミスマッチかが再認識できますね.


接点封鎖

 上述のように,買ってから実際に触ってみて,[3Dレンズだと認識しないでほしいな〜]と思いました.[未対応のボディーだったら普通にサイドバイサイドで見え,撮影できるんちゃう?]と思いました.[そのほうがええのに]と結論.

 某 BBS にお伺いを立ててみると,ほぼ同じ考えの先輩を発見.やはり結論は接点封鎖です.その方のブログにはテープを貼ったレンズが図示され,それで撮影した[素(す)の状態]の画像がアップされており,勇気づけられました.そうか,交差法配置になるのか… また,実際にテープを貼った状態の図がたいへん参考になりました.斜面からベターっと貼る,が正解なのです.レンズの着脱がスムーズにいくからです.なるほど〜.
 ボディ側を[レンズなしレリーズ]に設定しておけば,身元不明のレンズでもレリーズできます.旧規格レンズ,他社製レンズをとっかえひっかえして楽しむ m4/3 としては,この設定が全ての入り口のようです.
 あと,撮像範囲を16:9と幅広くしておきます.

 で,電気接点にテープ.ためしに貼ってみて,撮ってみて,なるほど〜.ただ,貼ったり剥がしたりは面倒です.

 一方で,店舗めぐりをして m4/3 のボディ,各機種が可動状態で陳列してある店をみつけ,自前の H-FT012 を持ち込んで装着させてもらいました.店員さんは状況を半分かり程度のようでしたが,快諾.その結果は;

 撮影はしませんでしたが,たぶん E-P1 ならそのまま撮れそうです.m4/3 規格の標準機なのでしょう.ピュアというかプレーンというか.

 筆者はけっきょく接点封鎖で常時固定することにしました.
 製本テープをサークルカッターで同心円状に切って丁寧に作成,貼付,封鎖完了.


製本テープで接点を封鎖したH-FT012
クローズアップレンズも装着してある

 ノーマル状態で撮れてくる *.mpo と,接点封鎖状態(で撮像範囲を16:9に設定)で撮れてくる *.jpg を比較してみると,後者の一定範囲を切り取ってつなぎ合わせたものが前者であることが分かります.後者,すなわち[素の画像]では中央部分に左右画像が重なった部分が生じます.また,クローズアップレンズをマウントしたりすると重なりは縮小し,ケラレが現れます.

 で,この[接点封鎖]→[サイド・バイ・サイドで撮影]での動画撮影がなかなか良いので別頁を立てておきます(動画:YouTubeへリンクあり).


H-FT012 でコロボックル・ワールドへ

サードパーティー

 ご立派なお店ばかり出入りし,厚紙高品位印刷の格調高い純正カタログばかり眺めておりましたので,m4/3 に 3rd パーティーが乱立していることに気付きませんでした.OM用のマウントアダプタなどは純正品希望価格の二割以下の値段で出ています.要するにただの筒,輪っかですから容易的工作.
 規格主唱者のオリンパスが旧シリーズOM用の輪っかを売り出すのは当然ですが,それとは無関係にサードパーティーが各社のレンズ用のを出すわ出すわ,付くわ付くわ,えらいことになってます.覗き具合,撮れ具合は別問題として,m4/3 は旧規格交換レンズ救済の希望の星になっています.知らんかったわぁ.
 サードパーティー製アダプタ,中には[無限出ます]などと当たり前の説明が付いています.これて[他社のは長すぎて∞に合わないあるヨ]の意味ですね? 玉石混交とはいえ,m4/3 業界,えらい活況です.けっこう普及するのかも.

 あと H-FT012 の同等品くらい,すぐ登場しそうです.レンズ識別情報なし電気接点なしで良いんです.そのほうが全ての m4/3 ボディへの対応を謳えますし.交差法配置の*.jpgで撮らせ,その編集変換ソフト,あるいは配布サイトへのリンクを付ければ十分でしょう.


原産国不明のOMアダプタを介して
50mmマクロとバリミラージュ
撮ってみると色収差がすごいことに
”コニカミノルタ”の珍品キャップはマレーシア製

 原産国不明のOMアダプタ用が何やかやと役立ちます.黴が生えそうだったOMレンズも復活です.ず〜っと昔,OM2000のオマケについていて,ぜんぜん使ってなかったズームレンズも持ち歩くようになりました.もともと軽量が売りの玉です.DMC-GH2 で何かをフツーに撮る(ちょっと望遠系ですが)にはこれで十分です.



「アダプタ様々ですわ」と喜びの声は Zuiko 35〜70mm さん

 希望していたエクステンション・チューブもただの輪っかなので平気で発売されていました.某市場出てて,セットでこの値段?的な驚異的低価格です.まぁ輪っかなので.早速発注.
 ところが,品物が届く前に先輩のBBSに H-FT012 には長すぎて使えないとの情報が! 届いたので付けてみるとその通り(ToT).ガックリ.エクステンション・チューブは最も短い状態でも 16.5mm あります.これではだめなのか…(考えてから買えよ>自分
 それにつけても工作の甘いこと.およそカメラ用品とは思えない粗さです.おそるべしサードパーティー.

 縁もゆかりもないペンタックス用のアダプタも発売?されています.オークションで現在価格=即決価格で出ています.しかも何社もあって価格もピンキリ.で,ピンの方を買ってみました.あれ?キリかなぁ? 要するに最廉価出品者から買たあるよ.
 ウチの"Loreo 3D Lens in a Cap"はペンタックスKマウントです.もともとマクロ志向のチームなのでエースの シグマの 50mm マクロ(+バリミラ)が旗艦 *ist DS を占領している上,最近は活躍の場を W1 に奪われてベンチを暖めています.ペンタックス用アダプターの出現で m4/3 に付けて活躍 …???… あ!


ペンタックス用アダプタを入手
いそいそと 3D Lens を付けてみると

 おそるべし!サードパーティー.
 なんとマウントの取り付け角度が回転しているというかネジレテイルというか,カチッとはめると 3D Lens が水平になりません,かなり斜めです.大抵のレンズでは問題ない事です.支障を来たすのはコイツくらいのもの,何と運のないやつ.
 ロックを緩めて水平に調整しても撮影はできます.どうせ手動フォーカスだし,手動絞りだし,レンズなしレリーズだし,別に良いのです.ただ,水平あわせは気にしだすと結構手間をとりますので,ちょっとねぇ.


ゲタ履かせ手術

 というわけで,晩秋から冬にかけてアレコレ試してみて,期待のエクステンション・チューブは使えなかったものの,クローズアップレンズ一枚または二枚使うという”ダブルバーガー戦術”が確立し,早く春になれと思っておったのですが,冬のうちに別の方法を知ってしまいました.
 H-FT012 のマウントのネジどめ部にワッシャを挟んで,繰り出したのと同等の効果を得るというものです.ワッシャの厚み分のエクステンション・チューブをはめた事になります.
 元は写真家の糸崎公朗氏によるマクロ化(レンズではなく4/3→m4/3アダプタに対して施すのが効果的)の技らしく,それを H-FT012 に対して施術した方のブログを発見.ステレオベース10ミリはマクロたるべしとのご意見のようで,またもや同志(というか先輩)出現です.既にストロボ一閃,空中戦でチョウのヒラヒラ状態をみごとに立体撮影して居られました.


ネジどめ部にワッシャのゲタを履かす

 で,筆者も早速実行しました.
 H-FT012 のマウント面には三個の+ネジが見えています.これらをすべて一旦はずします.マウント面の部品を少し浮かし,一枚目のワッシャを滑り込ませ,適当な位置でとりあえずネジを仮留めします.ワッシャをレンズ筺体の中に落としそうで怖いからです.これを順に三ヶ所行ったあと,ネジを本留めします.まぁ,簡単といえば簡単.
 マトモなレンズなら「マウントのネジを緩める」は覆水盆に返らず的,清水の舞台的な処置らしいのですが H-FT012 の場合だと誤差範囲だろうと思います.ほとんど躊躇なしに実施しました.

 あとで気付くとワッシャの厚みを計り忘れてました.調べると0.5mmでした.20cm先あたりでピントが合うようですので,上記のクロズアップレンズ No.3 を装着したのと近い状態になりました.コストパフォーマンス的にも大満足です.”ゲタ戦術”と命名.
 [無限出ません]状態になりましたが,元々このレンズで常基線モノを撮ろうとは思わないので,後悔することはありません.このレンズは出荷時点でこうしてほしかったに違いない,と思います.設計者に言ったら黙って握手してくれるでしょう.

 さて,うまくいってから,計算してみました.

 レンズの焦点距離=f,膜面〜レンズ主点=a,レンズ主点〜被写体=bとすると,レンズの公式(1/a)+(1/b)=1/fから,倍率はa/b=(a−f)/fであり,a−fがまさにゲタの高さ(ワッシャの厚み)です.(なるほど16.5mmの市販の接写リングでは像を結びませんね,納得)
 ゲタ高さa−fをdと書くと,倍率はa/b=d/f,このレンズでは12.5mmですので,0.5mmのワッシャだと倍率は1/25つまり×0.04,2.5mmで1/5つまり×0.2です(詳細下表).
 一方,ブツへの距離b(だいたいワーキングディスタンス)は,b=f×a/(a−f)で,これをゲタ高目線の式で書くと,b=f×(f+d)/dです.計算すると下表のようになります.

ゲタの高さとワーキングディスタンス,倍率
d(ゲタ高)b(主点〜被写体)a/b(倍率)
0 mm×0
0.1 mm1,575 mm×0.008
0.2 mm794 mm×0.016
0.3 mm533 mm×0.024
0.4 mm403 mm×0.032
0.5 mm325 mm×0.04
1.0 mm169 mm×0.08
1.5 mm116 mm×0.12
2.0 mm91 mm×0.16
2.5 mm75 mm×0.2
5 mm44 mm×0.4
10 mm28 mm×0.8
12.5 mm25 mm×1
(倍率は像の物理的倍率です.m4/3の撮像域は35mmに比べて縦横約半分なので画素数が同じであれば実質約二倍拡大像が得られます.)

 前述のように,基線長10mmのこのレンズは適正な立体撮影距離が50cm(〜接近状態5cm)だと考えられます.このゲタ戦術で対処する場合,0.3mm程度のワッシャが適当だということになります.0.5mmで”少し濃いめ”が現実的かも.


ミラーレス一眼と3D撮影

 と,Lumix H-FT012 + DMC-GH2 を一括購入という暴挙のあと,この頁を作って,ちまちまと加筆してきたのですが,書いている内容の中に異質な問題や可能性が混在していることに,次第に気付きました.そのうち整理して分割すべき頁だなと認識.
 書くべきことの一つは H-FT012 の有効活用法であり,もう一つは高くてエラソーでチグハグな DMC-GH2 の実態とそれを売りつけるメーカーへの批難であり,もう一つはミラーレス一眼というものの可能性です.
 で,この項目では三つ目を書くことにします.

 ミラーレスのデジタル一眼には,一眼レフの紛い物という位置づけと,一眼レフを越えた道具という位置づけがありえます.多分どちらかが正しいわけではなく,両方とも正論であり矛盾するものではありません.で,後者に注目すると,3D撮影に有用な特性が,けっこうあるある.

 まず,ライブビュー機能です.暗い環境で,あるいは暗いレンズで,ファインダーを覗いてもフォーカスすら当てられない.そういう場合にミラーレス一眼のライブビュー機能が(可能な場合)明るく見せてくれます.

 また,MFアシスト(マニュアル・フォーカス・アシスト)も有用です.ステレオアダプタや,ステレオレンズ,プリズムなどを装着してサイドバイサイドで撮影する場合,□□に並んだ左の□,あるいは右の□の中央に被写体を納めて,ピントを合わせる必要があります.一眼レフで覗くと,ファインダーの中の,左半分の真ん中あたり,とか,右半分の真ん中あたりです.全体からいうと左1/4か右1/4です.その辺りを凝視することになります.小さく見えていて,疲れます.
 本当なら,はじめから左半分とか,左半分その中央あたりを拡大表示してもらいたいのです.それだけ見てピントを合わせたいのです.その希望がミラーレス一眼では実現されます.MFアシストの表示エリア(≒フォーカシングポイント?)を左1/4か右1/4に持ってきて拡大表示すれば良いのです.

 → 
ミノルタの DiMAGE A2 でのファインダ像

 これらの特性は,別にレンズ交換式に限ることではなく,数年前,固定レンズ式のデジタル機,ミノルタの DiMAGE A2 ですでに経験していたのですが,ミラーレス一眼になっていろんな規格のレンズが活用できる状況になり,さらに利用価値が高まった感じです.


規格破り

 最後に悪態をば.

 そもそもDMC-GH2には設計思想とかポリシーとかが全くありません.PENと好対照です.
 結果的に完成度の高い製品であればポリシーなんかなくても良いけど,ポリシーがないためにデタラメなものができてしまった,それがDMC-GH2だろうと思います.
 パンフなどを見ると,このDMC-GH2はオートフォーカスが早い事が自慢です.3Dレンズ対応も特徴ですが,これは後で付け足したものでしょう.
 汎用機なら汎用機なりの,特化機,普及機,実用機,高級機,それぞれに意図が感じられるのが普通でしょう.使い捨てのレンズつきフィルムにも,実用度外視,コレクション保存用のプレミア機にも,それぞれのアイデンチチィっちゅうもんがあるでしょう.ところが DMC-GH2 にはそれがない.この機材で何を目指す,この機材をどう使って欲しい,という作り手の気持ちがこもってないのです.
 オートフォーカスが早いカメラ … どう構えて,どこを覗くのか? たぶん,構えずに覗かずに適当に切る事を想定しているのです.たぶん使い手をバカにしてるんだろうと思いますが,[お気楽に]志向だと言われれば,それもアリなのかもしれません.
 オートフォーカスが早いカメラ … ユーザとカメラの分業を考えるなら,人のすべきことは,琴線に触れた瞬間にそっちにカメラを振り,感性がひらめいた瞬間とにかくレリーズでしょう.それに対してカメラは,一瞬でピントを合わせて記録してやるから任せとけ!です.こいつはそういうヤツなはずです,本来.分業がうまくいった場合,他機種ではできないレスポンスが得られるはずです.

 ところが,こういった DMC-GH2 の特性は3D撮影と合っていません.鉄棒が得意な子の折紙みたいに,全く無関係,むしろ相反する適性かもしれません.
 たとえば…3Dでは水平が重要です,きちんと構図を考えて撮るものです.DMC-GH2 は逆です.パッと向けて切る!傾きなんかあと!あと!という心のカメラです.
 で,そんな DMC-GH2 に[3D対応]の課題を押し付けてどうする? そもそもこの3Dレンズ,H-FT012 には絞りもフォーカスもありません.最速の能力の発揮のしようがありません.
 3D画像の*.mpoでの書き込みはソフト的なものですから何とかクリアできても,もともと3Dを表示するメカニズムを備えてないのですから,自ずと限界が.その結果,3Dで撮っても表示もファイルの存在も示せないという体たらく.
 最速AFならファインダも一つで十分,撮影のためにファインダを見るのは邪道です.カメラを信じろ!です.背面の液晶パネルは設定と撮影結果の表示が本分です.こちらも普段はおとなしく節電しときなさい.と,いうのが本来の方向性だと思います.

 筆者は3D派の立場から[最速AFか3Dか,どっちやねん]と思うわけですが,たぶん本人(?)は[3Dは重荷っす(^^;]と思ってると思いますよ.意思表示機能はないけど[オレ,全力でAFいきます]ていうグリップ感してます.[最速AF]だけで出してやりたかったなぁ.
 先に[ポリシーがないためにデタラメなものが…]と書きましたが,当初は有ったのかもしれません.開発途上でポリシーを消され,ゴテゴテと余計な物を背負わされて強烈なアイデンティティーを潰された機種のような気がしてきました(涙).

 無理やり3Dなんか押し付けてスマン.> GH2
 自社製品への愛はないのか?>パナソ商品企画担当者

 逆に(W3のような)3D表示機能を持たすなら,それは別の機械とすべきです.クラシックレンズを含めオートフォーカスの効かないレンズを装着してじっくりフォーカスし絞りを選ぶ,そういうボディーもあって良いのです.AFなくてもいいです.遅くてもいいです.あってもみんなOFFにしてます.そういった子が3D対応の役目を担うべきだったのです.

 現実の DMC-GH2 は設定がてんこ盛りです.メニューの配列は意図が読めません,優先順位が分かりません.整理しろよ,と思います.たぶんソフトもハードも社内で使えそうな技術を適当に詰め込んだだけのものなのでしょう.これだけあって[レンズ情報を無視]のオプションが無いのが謎です.レンズの発売権を独占したいんでしょうか?
 ソフトもハードも適当に詰め込んだだけなので整合性が取れていません.DMC-GH2では特に動画の撮影と3Dレンズ対応が全く無関係に詰め込まれています.3Dレンズを認識して,その像を*.mpo形式で書き込みはできるけど表示ができない,ファイルの存在さえ確認できない.ハードが揃ってないのにソフトを焼きこんであるのです.驚異的なチグハクさ,そのチグハグをほったらかす厚かましさ.

 そもそも3D画像,映像も普通にサイド・バイ・サイドのまま*.jpgにしたり,動画ファイルにしたり(も,できるように)すれば良いだけなのに,固定絞り,固定フォーカスの不器用なレンズとして全てのボディーで使用可にすれば良いのに,そのための共通規格であり交換システムであるのに,なぜあえて機種限定なのか?
 自社の3Dテレビ(のみ)を売りつけるための戦術なのでしょうね.規格なんか破りほうだい.自社の都合で勝手に拡張.後付で新規格を策定? ありがちな.目先のことしか見えてないのです.しょせん MSXturboR のナショナルですわな.


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